金田歯科医院
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こんにちは。京都市左京区岩倉にある歯医者「金田歯科医院」です。
あごの痛みや口を開けづらいといった「顎関節症」の治療では、スプリント(マウスピース)治療が重要な役割を担います。スプリントとは、就寝時などに装着する取り外し式の装置で、歯ぎしりやくいしばりによるあごの負担を軽減し、筋肉や関節の安定をサポートするものです。
顎関節症は、ストレスや姿勢、噛み合わせなど、さまざまな要因が複雑に関係して起こるため、原因を一つに特定することは容易ではありません。スプリント治療は、そうした多因子的なトラブルの中で、関節や筋肉に「安静を与える」ことを目的としたアプローチです。
今回は、スプリント治療の仕組みや種類、効果、そして注意すべきポイントについて、わかりやすく解説していきます。

スプリント(マウスピース)治療は、顎関節症の治療で広く用いられる方法のひとつです。透明または半透明の樹脂製の装置を歯列に装着し、あごの関節や筋肉への負担をやわらげます。一般的には夜間の就寝時に使用し、「スプリント療法」や「ナイトガード治療」とも呼ばれます。
歯ぎしりや食いしばりによって過剰にかかる力を分散し、筋肉の緊張を緩和して関節の動きを安定させるのが目的です。スプリントは原因そのものを取り除く治療ではありませんが、関節や筋肉を休ませることで炎症の悪化を抑えることが期待できます。
装置は患者さんごとに歯型を取って作製されるため、適合性が高く、歯科医師の調整のもとで適切に使用できます。市販のマウスピースは噛み合わせが合わず、症状を悪化させるおそれがあるため、歯科医院での診断と調整が大切です。
顎関節症の多くは、あごの関節や筋肉に過度な負担がかかることで生じます。スプリント治療は、こうした負担をやわらげ、関節を安定させるために行われます。主な目的と効果は次のとおりです。
・歯ぎしり・くいしばりによる負担の軽減
睡眠中の歯ぎしりや日中のくいしばりは、知らず知らずのうちに顎関節や筋肉に大きな力をかけています。スプリントを装着することで、この力を分散させ、関節や筋肉を保護します。
・噛み合わせのバランスを整える
歯の接触状態をコントロールし、左右の噛み合わせのバランスを改善します。これにより、あごの動きがスムーズになり、関節の位置が安定しやすくなります。
・炎症や痛みの緩和
関節や周囲の筋肉が安静な状態になることで、炎症や痛みの悪化を防ぎ、自然な回復を促します。初期段階の顎関節症であれば、症状の軽減が期待できるケースもあります。
スプリント治療は、薬を使わずに負担を減らし、あごを「休ませる」治療です。無理に関節を動かす必要がないため、体への負担が比較的少ない治療方法のひとつです。

スプリントといっても、症状や目的に応じていくつかのタイプがあります。どのタイプを使うかは、顎関節や筋肉の状態、痛みの有無などを踏まえて歯科医師が判断します。主な種類と特徴は次のとおりです。
◎スタビライゼーションスプリント(安静型)
顎関節症の治療で最も一般的に使われるタイプです。主に夜間に装着し、上下の歯の間に適度なすき間を作ることで、筋肉の緊張をやわらげ、関節への負担を減らします。関節や筋肉を安静に保つ効果があり、初期の痛みやこわばりを抑えるのに役立ちます。
◎リポジショニングスプリント(位置誘導型)
あごの関節内で、関節円板(クッションのような組織)がずれている場合に用いられます。装着によって下あごの位置を一時的に誘導し、関節円板と骨の位置関係を安定させる目的があります。症状の経過に合わせて、装着時間や形状を段階的に調整することが多い治療です。
◎ナイトガード
主に歯ぎしりやくいしばりによる歯の摩耗や破折を防ぐ目的で使用します。スプリント療法の一種ですが、顎関節症の治療よりも「歯の保護」に重点を置いたタイプです。噛む力の分散や、歯の欠け・削れ防止に有効です。
いずれのスプリントも、歯型を取って一人ひとりに合わせて作製されます。自己判断で市販品を使用すると、かえって噛み合わせを乱すおそれがあるため、必ず歯科医院で適切に調整を受けましょう。

スプリント治療は、正しい使い方と日々の管理を守ることで効果を発揮します。装着時間やお手入れの方法を誤ると、十分な効果が得られなかったり、かえって症状を悪化させる場合もあります。以下のポイントを参考に、正しく使いましょう。
・装着時間を守る
基本的には就寝時に装着します。睡眠中の歯ぎしり・くいしばりを防ぐことが主な目的ですが、症状や治療の段階によっては、日中の使用を指示されることもあります。歯科医師の指導に従い、装着時間を守ることが大切です。
・清潔に保つ
使用後は水洗いし、やわらかいブラシで軽くこすって清掃します。歯磨き粉を使うと傷がつくため避けましょう。汚れや臭いが気になる場合は、専用の洗浄剤を用いるのも効果的です。清潔を保つことで、口内トラブルや細菌の繁殖を防げます。
・自己判断で使用をやめない
違和感が減ったからといって装着をやめてしまうと、症状が再発することがあります。痛みが出たり、装着時に強い圧迫感がある場合は、使用を中止するのではなく、歯科医師に相談して調整を受けましょう。
・保管にも注意
高温になる場所や、ペットの手が届く場所に置くと変形・破損の原因になります。清掃後はしっかり乾燥させ、専用ケースに保管しましょう。
こうした基本的な管理を心がけることで、スプリント治療の効果をより長く、安全に維持できます。

スプリント治療の効果が現れるまでの期間は、症状の原因や進行度、日常生活でのあごの使い方によって異なります。一般的には、装着を始めてから数週間〜数か月で痛みや違和感がやわらぐケースが多くみられます。
ただし、スプリントは「つけるだけで治る」装置ではありません。定期的に歯科医院で噛み合わせや関節の位置を確認し、必要に応じて微調整を行うことが重要です。初期はあごや筋肉が変化しやすいため、経過観察を続けながら慎重に進めます。
また、効果を高めるには生活習慣の見直しも欠かせません。姿勢の悪さやストレス、片噛みのクセを避け、リラックスできる時間を持つことが改善を助けます。焦らず根気よく続け、歯科医師の指導のもとで正しく使用することが、安定した回復への近道です。

スプリント治療は、顎関節症に対して比較的負担が少なく、あごの痛みやこわばりをやわらげる効果が期待できる方法です。早期から適切に使用を始めることで、関節や筋肉への負担を減らし、症状の進行を抑えやすくなります。
ただし、装着だけで完治するわけではなく、姿勢やストレス、噛み合わせなど、日常生活の見直しも欠かせません。違和感や痛みが続く場合は、自己判断で使用を中止せず、歯科医師にご相談ください。
当院では、スプリント治療をはじめ、生活習慣や噛み合わせのバランスも含めて一人ひとりに合ったケアをご提案しています。あごの不快感や音が気になる方は、どうぞお気軽にご相談ください。