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2023.04.17
目次
京都市左京区の歯医者、金田歯科医院の院長の金田直樹です。
本日のお話は歯を削る機械であるハンドピース専用の滅菌器についてのお話です。
当院では、安心・安全な医療を皆様にご提供するため、院内の衛生管理及び感染予防対策を徹底しております。そのため、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)を使った滅菌とは別に、「ピコクレーブ」を用いてハンドピースやタービンを滅菌しております。
オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)については、こちらもご参照ください。
歯科治療を受けるにあたり、安心・安全に治療を受けられる環境は非常に重要です。2014年ごろ、タービンなどのハンドピースの滅菌を行っている医療機関が3割しかないという調査結果を新聞が報じたことをきっかけに、日本の歯科医院における感染対策や滅菌の実態が広く知られるようになりました。さらに、2020年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これまでよりも一層医療機関における感染対策の重要性について注目が集まるようになり、歯科医院を選ぶ際にも「安心・安全な医療サービスを受けられるか」ということがより重視されるようになったことは言うまでもありません。
まず、院内の感染予防対策の基本となる考え方は標準予防策(スタンダード・プリコーション:感染症の有無を問わず、全ての患者の血液、体液(汗を除く)、分泌物、排泄物、粘膜、損傷した皮膚には感染の可能性があるとみなし、患者や医療従事者による感染を予防するための予防策のこと)であり、これを遵守することがなによりも大切です。そのうえで、院内の感染予防対策の3つの柱として、①診療所内の清掃、②治療器具等の「洗浄」「消毒」「滅菌」、③院内感染経路の遮断が挙げられます。これらを遂行する際、医療従事者にとって基本的な考え方となるのが「清潔・不潔」の区別です。清潔とは、すべての微生物を死滅させた“滅菌”状態か、滅菌できないものに関しては“殺菌”した状態を指します。不潔とは、清潔ではない状態全てを指します。すべての医療従事者は、まず何が清潔で、どのように対応すれば清潔が保たれるか、不潔なものはどう扱うべきか、ということについて学んでいますので、院内のあらゆる場所や治療に使用する機器、材料、備品は清潔に保たれるよう、様々な方法によって管理されています。例
えば、患者様の口腔内に触れて唾液や血液が付着したグローブ(手袋)は”清潔”ではありません。その状態で触れたものは全て”不潔“の扱いとなるため、医療従事者は常に自分の手が清潔(手洗い後の手指もしくは新しいグローブを着用)か、不潔(唾液や血液が付着していたり、汚染された箇所に触れる)かを常に自覚し、触れていいところを触れてはいけないところを意識しながら行動しています。
ハンドピースとは、歯などを削る回転切削器具のことをいいます。大きく分けると、タービン(エアタービン)とエンジン(マイクロモーター)の2種類があり、用途や目的によって使い分けています。
【タービン】
高速回転が可能で、虫歯部分の切削、咬合調整などに使用します。所謂、歯科医院特有のキーンと音がするのは、このタービンによる音です。
【エンジン】
エンジンはタービンに比べると低速回転で、さらに3種類に分類されます。
〇ストレートタイプ…基本的には口腔外で使用し、被せ物や入れ歯などの技工物の調整や研磨に使用します。
〇コントラアングルタイプ…用途はストレートタイプとほぼ同じですが、口腔内で使用しやすいように作業部に角度がついています。
〇5倍速コントラタイプ…形はコントラアングルタイプと同様で、こちらも口腔内で使用します。回転速度はコントラアングルタイプの5倍で、虫歯の切削や被せ物の除去に使用します。
治療に使用するハンドピースは、滅菌された”清潔”な状態で準備されます。現在使用されているタービンは、昔のものとは異なり、機器の中に飛沫を吸い込まない構造(サックバック防止機能)になっていますが、それでもやはりタービン周囲には唾液や血液、切削片といった飛沫が付着します。治療時にお口の中に直接入れるものは飛沫が付着するため、その時点で”不潔”となります。一方、お口の外で使用するハンドピース(前述のストレートタイプエンジン等)は直接唾液や血液に触れることは少ないものの、すでに“不潔”扱いとなっているグローブで触れたり、お口の中に入れた被せ物や入れ歯に接すれば、それは”不潔”の扱いとなります。したがって、治療に使用したハンドピースは全て感染リスクをもつため、その都度滅菌処理を行わなければなりません。
ハンドピースのメンテナンスサイクルは、洗浄―注油―滅菌―保管です。【洗浄】
ハンドピースに付着した血液や唾液、その他の汚れを流水下でブラシ等を用いて洗浄します。特に、ヘッド部分は切削片などが付着しやすいため、丁寧に洗浄します。ハンドピース内にたんぱく質が残った状態で滅菌すると、加熱により凝固し、それが故障の原因になるため、内部構造の保護という意味合いでも洗浄は重要な工程です。
【注油】
ハンドピースを安全に高速回転させるためには潤滑油が必要です。一度治療にハンドピースを使用すると潤滑油は飛んでしまうため、使用毎に再注油します。十分に注油を行うことは、ハンドピースの不具合を防ぐことにも繋がります。
【滅菌】
次の患者様に安全に使用できる状態にするため、全ての微生物を適切な温度・圧力の飽和水蒸気で滅菌します。ハンドピースの滅菌には、中空器材も中までしっかりと滅菌ができるクラスS以上の滅菌器が推奨されます。
【保管】
完全に滅菌処理されたものは、開封されないかぎり無菌性が保たれます。滅菌物が汚染を受けないように正しく管理するために、扉のついた棚など適切な環境で保管をします。
当院で導入している「ピコクレーブ」は、ハンドピースなどの小型器具に特化した滅菌器です。使用後、洗浄・注油されたハンドピースは滅菌パックに包んでから滅菌処理が行われます。滅菌に使用する水も、循環型ではなくその都度入れ替えており、またチャンバー内の残留空気を水蒸気に置き換える独自の機能を採用していることから、常に安定したレベルで信頼性の高い滅菌を行うことができます。実績のある国産品であり、故障が少なく滅菌の機能も安定していることから、市場でも700台以上が販売されています。ピ
コクレーブにおいては、滅菌パックに入れた状態のハンドピース約6本を30分ほどで滅菌することができるため、短時間で確実な滅菌が可能なピコクレーブは当院におきましても大変重宝しております。
以上のように、歯科医院において安心・安全な歯科医療をご提供するためには、器材の滅菌処理を確実に行うことがなによりも重要であることは明確です。歯科医院には日々多くの患者様がご来院され、虫歯の治療、歯周病の治療、クリーニングなどの予防処置、被せ物の作製、入れ歯の作製や調整、抜歯など多岐に渡る治療が行われています。これらの治療に用いる器具は用途により細かく分類され、それぞれの治療に合った器具を常に清潔な状態で準備することがなによりも大切です。
当院においても、常に感染予防対策に最大限配慮し、新しい技術やシステムを導入していけるよう、スタッフ全員が高い意識をもち、専門知識を習得しながら日々取り組んでおります。これからも、ご来院いただく皆様に安心・安全な歯科医療をご提供できるよう、精進いたします。