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2023.04.16
目次
京都市左京区の歯医者、金田歯科医院の院長の金田直樹です。
今日のお話は歯医者で使用する滅菌器についてのお話です。
当院では、安心・安全な医療を皆様にご提供するため、院内の衛生管理及び感染予防対策を徹底しております。その一環として当院で導入しております、小型高圧蒸気滅菌器「クラス B オートクレーブ リサ」をご紹介いたします。
2020 年以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これまでよりも一層歯科医院をはじめとする医療機関における感染予防対策の重要性について注目されるようになりました。 一般に、感染対策の基本となる考え方は、標準予防策(スタンダード・プリコーション)です。標準予防策とは、「すべての患者のすべての湿性生体物質:血液、体液、分泌物、嘔吐物、排泄物、創傷皮膚、粘膜等は、感染性があるものとして取り扱わなければならない」という考え方を基本としたもので、これらを遵守し、患者様ごとの環境消毒の配慮、それぞれの診療室環境に応じた感染予防の工夫により院内感染対策の向上を図ることが、歯科医院での感染対策において重要とされています。具体的には、手指の衛生管理や個人防護具の着用、そして器材使用後の洗浄や消毒、滅菌などが挙げられます。
感染対策において、「消毒」、「殺菌」、「滅菌」という言葉を耳にすることは多くありますが、具体的にこれらの違いをご存知でしょうか。
・消毒…人体に有害な物質を除去または無害化し、細菌の活動を弱めること。「除菌」もこれに近い。
・殺菌…病原性や有害性を有する糸状菌、細菌、ウイルスなどの特定の細菌および微生物を死滅させる操作のこと。
・滅菌…増殖性を持つあらゆる細菌および微生物を、完全に殺滅または除去する状態を実現すること。
今回ご紹介する「クラス B オートクレーブ リサ」は、この中での「滅菌」にあたる作業をする機器です。
歯科治療使用後の器材には、唾液や血液、更には目に見えないタンパク質などの汚れが付着しています。これらは細菌やウイルスの感染経路となるため、使用後の器材は確実に滅菌処理しなければなりません。また、歯科治療に使用する器材はハンドピース(歯を削る道具) など複雑で精密な構造をもつものが多くあります。そのため、機械の内部の目に見えない部分までもをしっかり滅菌できることが非常に重要です。これらの必要条件をかなえることが出来るのが、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌機)です。
滅菌には、オートクレーブ、酸化エチレンガス滅菌、過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌、化学的滅菌などがありますが、オートクレーブは比較的扱いが容易で、残留毒性もないため、 滅菌条件に耐えられる器材であれば最も安全で確実な滅菌方法として推奨されています。
オートクレーブは、高温の蒸気で装置内に圧力をかけることにより、器具や容器に付着したすべての微生物を殺滅または除去することができます。ミラーやプローブなどの様々な歯科用器具はもちろん、口腔内で扱うチューブや複雑な器具、歯を削るタービンやコントラなど、あらゆる器材に対して使用します。このオートクレーブにより、C型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、エイズウイルスなどの院内感染を防ぐことが期待されています。しかし、どのオートクレーブでも細部まで滅菌ができるというわけではありません。
歯科医院においてはオートクレーブが一般的に広く活用されていますが、オートクレーブは滅菌の強さにより上から B/S/N に分類されています。
・クラスB(Big Autocrave Cycle)…滅菌前および乾燥時に数回の真空状態を作り出し、あらゆる種類・形状の器具(歯を削るハンドピースやコントラなどの細部が複雑な器具を含む) の滅菌が可能。
・クラスS(Specific Cycle)…滅菌前に 1 回真空状態を作り出し、滅菌を行う。クラスNとクラスBの中間的なレベル。
・クラスN(Naked Cycle)…蒸気と空気の圧力の作用で、オートクレーブ内の空気除去を行う。一般的な歯科医院で使用されているが、複雑な器具の滅菌には適さない。
このように、オートクレーブは3段階に分類されていますが、クラスBのみが唯一すべての形状の被滅菌物(固形、中空物、多孔体、一重包装、二重包装)を滅菌できるとされています。特に、内腔器材等の滅菌においては、滅菌の前後で真空脱気を行うプレバキューム式の滅菌器が推奨されており、これを実現できるのはクラスBオートクレーブだけです。
当院で導入している「クラスBオートクレーブ リサ」は、小型オートクレーブに関するヨーロッパ規格 EN13060 に準拠した高性能なオートクレーブです。バキュームと蒸気の注入を交互に繰り返し、滅菌物の内部まで蒸気を行き渡らせることで、これまで滅菌が難しかった中空の器材も滅菌ができるようになりました。また、真空下で乾燥工程を行い、被滅菌物を乾燥させますが、0.3 ミクロンのバクテリアフィルターを通った清潔な空気の流入と真空を繰り返すことにより、外部の雑菌を侵入させずに乾燥することができます。チャンバーの容量も 22 リットルと多く、すべての工程を約 30 分で完了することが可能です。
2014 年ごろから、歯科医院におけるハンドピースの使い回しが話題となっていることが記憶に新しい方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。歯科治療に使用するハンドピースは治療時にお口の中に直接入れるものであり、唾液や血液が付着しやすく、もしそれを使い回した場合には細菌やウイルスを次の患者様に感染させるリスクがあります。当院においては、治療で使用するハンドピースやすべての器具については患者様ごとに滅菌処理を行い、使い回しは厳禁としております。滅菌処理後は、滅菌パックなど適切な管理方法で保管し、使用する直前の開封を徹底しています。そのため、十分な数のハンドピースや器具をご用意しており、万が一、滅菌器にトラブルが起こった際にも、清潔な状態の器具を患者様にご提供できるよう万全の準備をしています。 従来のオートクレーブでは、乾燥工程だけで 30 分以上かかるなど、作業効率がとても優れているとはいえず、前述のような使い回しの事例が生じてしまったことについてもこのことが一因になった可能性は否定できません。当院においては、患者様お一人おひとりに清潔な器具をご提供できるだけの量を十分に準備しておりますため、約30分と短時間で高度な滅菌が可能な「クラスBオートクレーブ リサ」は大変重宝しております。
以上の様に、歯科医院において安心・安全な歯科医療をご提供するためには、器材の滅菌処理を確実に行うことが重要であることは明確です。歯科医院には日々多くの患者様がご来院され、虫歯の治療、歯周病の治療、クリーニングなどの予防処置、被せ物の作製、入れ歯の作製や調整、抜歯など多岐に渡る治療が行われています。これらの治療に用いる器具は用途により細かく分類され、それぞれの治療に合った器具を常に清潔な状態で準備することがなによりも大切です。
当院においても、常に感染予防対策に気を配り、新しい技術やシステムを導入していけるよう、専門知識を習得しながら日々取り組んでおります。これからも、ご来院いただく皆様に安心・安全な歯科医療をご提供できるよう、精進いたします。